北海道の自然と対峙するタウシュベツ川橋梁(資料提供:NPOひがし大雪自然ガイドセンター)

☆“幻の橋”の異名をとるタウシュベツ川橋梁
 北海道上士幌町の糠平湖(ダム湖)を横断する全長130mのタウシュベツ川橋梁は、多くの見学客や写真家を魅了する究極のインフラツーリズムスポットだ。この廃線橋梁は旧日本国有鉄道士幌線の一部で、昭和12年(1937年)に建設された。戦後、昭和30年(1955年)に路線の敷き替えにより廃線になり、そのまま存置されている。ダム湖の水位変化で見え隠れするため“幻の橋”の異名をとり、四季折々に千変万化する姿形は感動的でもある。
 このコンクリート高架橋は、当地の厳しい気象条件のもとかなりの劣化、損傷を免れず、年々朽ち果てていくその様子が話題になっている。極寒期には最低気温が−25℃を下ることもあり、日較差が大きいことも凍害を促進する。コンクリート工学的には、凍結融解作用(freezing and thawing cycles)と呼ばれる、凍結と融解の繰り返しによる寒冷地特有の劣化現象である。コンクリート技術者から見れば、前例のない長期の暴露試験を継続していることにもなり、より仔細に調査したいところだ。

☆現地訪問にはガイドツアーがおすすめ
 糠平湖に屹立するタウシュベツ川橋梁の現地見学には「NPOひがし大雪(たいせつ)自然ガイド
センター」が主催するツアー(有料・予約制)がおすすめ。見所はタウシュベツ川橋梁 だけではない。 第五音更川(おとふけがわ)橋梁(橋長109m)や三の沢橋梁(橋長40m)など現存する旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋梁群(北海道遺産/近代化産業遺産)に、かつて当地を疾走した列車に思いを馳せることも大切だ。
 すでに主(走行列車)を失い、現地に放置された高さ10mの11連アーチ橋は、文字通り八十余年の風雪に耐え、その凜とした立ち姿には神々しい佇まいを感じる。同時に、当時の先端技術である高架橋の設計・施工に従事した鉄道土木の先達に畏敬の念をもって、この橋たちを見守りたい。
(資料提供:NPOひがし大雪自然ガイドセンター)

投稿日時 2024-09-03 21:17:54

投稿:yoshikawa hiromichi