東京港開港80年:首都物流の心臓
(日経新聞2021年5月記事)

 東京湾の人工島「中央防波堤埋立地」にそびえ立つ巨大クレーンが貨物をゆっくりとつり上げていく。2020年、大型コンテナ船に対応したY2コンテナターミナルの供用を開始した。
 江戸時代から沖合に向け拡大を続けてきた東京港が国際港として開かれて5月で80年。コンテナ取扱個数は半世紀で約84倍に増えたが、世界では台頭するアジアに後れを取り2019年は39位に。時代とともに移ろう産業構造や生活様式の波に揺られながら、その姿も大きく変化させてきた。
 東京港の埋め立てが進んだのは高度経済成長期。機能拡大のため現在の大井埠頭や青梅埠頭が整備された。東京都港湾振興協会の海宝博氏事務局長によると「日用品、食品、薬品、機械などの取り扱いが増え、大型船が着岸できる埠頭施設が必要になった」。現在、中央防波堤埋立地の先で「Y2」が稼働し、24年には「Y3」ターミナルも新設する予定だ。世界的に主流の一つである1万5000TEU(20フィートコンテナ換算で1万5000個積める)クラスに近い大型船にも対応する。
 流通経済大学の矢野裕児教授は「国内で最も生活密着型の港湾として発展してきた」と見る。そして「世界各地からモノが集まり人々の元へ流通する様子は、血液を送りだす心臓のようなものだ」と、その重要性も語る。この30年、輸入が輸出を上回り首都圏4千万人の生活を支えている。
 ライフスタイルの変化は取り扱う品目や物量も変えた。食卓でも日常の光景となったワインの取扱量は30年前の約2・3倍に(財務省貿易統計)。衣類は約27倍に増大した。イオンによると、ワイン輸入子会社のコルドンヴェール(東京・千代田区)を通じて輸入する9割が東京港を経由して関東圏に流通される。同社の20年のイオン向けの出荷額は、コロナ禍の巣ごもり需要が要因で前年比約1割増と順調だ。

#東京湾物語

投稿日時 2021-06-12 18:20:00

投稿:Hiromichi Yoshikawa