☆☆鋼トラス橋の源流を探るno.1:南河内橋(福岡県北九州市)

☆☆鋼トラス橋の源流を探るno.1:南河内橋(福岡県北九州市)
 国の重要文化財にも指定されている南河内橋は、鋼トラス橋の中でも珍しいレンティキュラー・トラスが採用されています。放物線状の上弦材と下弦材を組み合わせてレンズ状の形状をなし、その外観から通称めがね橋とも言われています。
 1926年に私達の先輩沼田尚徳技師(当時官営八幡製鉄所)が、製鉄所用水確保のための河内貯水池、重力式ダムを建設した際、架けられた橋と伺っております。土木技術者としての沼田技師の人生をかけた偉業に、技師としての情熱、人としての気高さ、そして優しさをも思い起こします。

 この橋を含む河内貯水池の建設中には、お子様たちを亡くし、また作業に携わる方々へ献身的にお世話した奥様も亡くすという悲劇に見舞われましたことも聞いています。
 鋼橋建設の先達 沼田技師の言葉、『記念として。今は亡き最愛の妻沼田泰子、私は、彼女の自己犠牲と神の恵みにより、河内貯水池の建設をやりとげることができた』が、貯水池近くに建立された碑に刻まれておりました。
 (本間宏二 東京都市大学教授、元新日本製鐵株式会社勤務)

・竣工:1926年(大正15年)
・構造形式:レンティキュラートラス橋(レンズ型トラス橋)本形式の橋としては、国内で唯一現存する。
・構造諸元:橋長132.97m、径間66m、幅員3.6m
・所在地:福岡県北九州市八幡東区大字大蔵

投稿日時 2020-10-03 18:15:00

投稿:本間宏二