人海戦術で突貫工事の末に完成した、仙人谷ダムと黒部川第三発電所(くろさん)
仙人谷ダム(せんにんだにダム)は、富山県黒部市欅平の黒部川第三発電所(くろさん)で発電を行うために、黒部川に建設された関西電力の重力式コンクリートダムで、土木学会の「日本の近代土木遺産―現存する重要な土木構造物2000選」に認定されている。
1936年(昭和11年)に国家総動員法のもとに当時の労働者の平均月収の10倍以上の給金で作業員が駆り集められ工事を開始し、人海戦術で突貫工事が進められた。1939年(昭和14年)に阿曽原 - 仙人谷の水路隧道が完成、1940年にダム本体が完成し、黒部川第三発電所が発電を開始した。
ダム建設の資材運搬には欅平に高さ200メートルのトロッコ運搬用のエレベーターが設置され、トロッコは関西電力黒部専用鉄道で運搬された。
専用鉄道の建設では、水平歩道で資材運搬を行う歩荷の転落事故が日常的に発生し、隧道掘削では、摂氏166度に達する高熱の岩盤掘削が行われ「高熱隧道」と呼ばれた。又、1938年の泡雪崩では、1・2階鉄筋コンクリート、3・4階木造の飯場の木造部分が峡谷の対岸まで600メートル余り吹き飛ばされ死者84名、隧道貫通後の1940年の泡雪崩では死者26名を出した。
高熱隧道掘削や泡雪崩も含めた尊い犠牲者は全工区で300人余りに及んだ。
〇ダム・発電所諸元
重力式コンクリートダム、堤高47.5 m、堤頂長77.3 m、堤体積37,000 m³、総貯水容量682,000 m³、認可出力:黒部川第三発電所(81,000 kW)、事業主体:日本電力→日本発送電→関西電力
【参考文献等】: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』仙人谷ダム
【写真】平成30年8月投稿者が撮影(1枚目:仙人谷ダム、2枚目:関西電力黒部専用鉄道隧道)
投稿日時 2018-12-16 10:28:00
投稿:佐藤祐明