旧中川は、優れた親水空間であり、防災拠点でもある

 東京都の旧中川は、荒川放水路の開削により中川が分断されてできた河川で、荒川と隅田川に挟まれた江東デルタ地帯を蛇行しながら流れる、延長6.68kmの荒川水系一級河川である。

 旧中川沿いの地域は、主に水溶性天然ガスの採取のため地下水の汲み上げにより地盤沈下が進行し、高潮や洪水に対して脆弱な地域であった。そのため、昭和46年より治水対策が進められ、約40年後の平成23年3月に整備事業を完了した。

 旧中川は天井川を解消するために、平常水位を地盤面以下に低下させる水位低下方式を採用し、昭和46年から排水機場・閘門を設置するとともに護岸整備を進められた。
 その結果、安全でうるおいがあり、生態系が豊かで、カヌー等が行きかう良好な親水空間に生まれ変わった。

 また、1995年の阪神・淡路大震災以後、災害時における水上交通網の有効性が注目され、災害発生時の復旧に必要となる人・資機材を運ぶための「防災船着場」が整備され、災害救助・復旧支援活動の拠点としての機能が期待される。

 旧中川は、地域を水害から守り、人々の憩いの場、更に防災拠点としての機能を備えた優れた親水空間であった。
【写真】1枚目:防災船着場は防災拠点、2枚目:カヌーを楽しむ人々
(平成31年4月13日投稿者が撮影)‎
#ぶらりインフラ探訪記

【参考文献】
旧中川整備事業の完了に向けた取組みについて(東京都建設局江東治水事務所内部河川工事課)
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000062759.pdf
防災船着場を活用した舟運の推進(関東地方整備局 荒川下流河川事務所 調査課)
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000105758.pdf

投稿日時 2019-04-21 21:04:00

投稿:佐藤祐明